HPに「Othe〜その他」というコーナーを設けたのでネタを考えていたら、ミネルバのストップウオッチが2つストックがあったことをふと思いだしました。商品を確認してHPに掲載すべく朝から写真を撮ってました。最もシンプルな「積算なし」と「積算計付き」の2つです。
自分が小学校の頃、体育の時間先生の首にぶら下がっていたのは、国産の機械式のストップウオッチだったように思います。短距離も特に長距離は苦手だったのでストップウオッチを見ると、走る前の憂鬱な気分を思い出します。今となっては懐かしい思いですが、そんな機械式のストップウオッチ、少し前に既に、前世紀の遺物と思われている存在です。でも良いんですよ色々と、なにしろ「あの時代のミネルバ製」でもあるわけですから….。
午後からアップする写真を選んでいたところに、わりと近くに住まれるお客様(男性の方)がご来店されて、「2万円位で時間が計れる時計何かない?デジタルでも良いんですけどね…」何やら華道で時間を計る必要があるらしい。条件に合う時計がなかったので、ダメ元で午前中撮影していたデジタルでもなく、予算オーバー(¥38,000)、しかも機械式である何一つ条件にあっていないミネルバをお見せしました。するとお客様はミネルバのスタートボタンを2〜3回押して、私の語り始めたウンチクを一切聞こうともせずに、値札を見ずにポケットから取り出した財布を開けてお札を全部出すというまさかの行動。「ね、ホントに全部でしょ、買えるかなぁ」と言いながら、そして笑いながら空の財布をわざわざ見せてくれました。二人で時計の横に重なったお札を確認してみると、1万円札が3枚、5千円札が1枚、千円札が3枚合計¥38,000-。「で、幾らですか?買えますか?」私は少し驚いて赤い紙製の超味のあるプライスタグを裏返してお見せしました。そこには¥38,000-のプリント。心のなかで「ブレインダイブ」とつぶやきました。あっ消費税….とよぎりましたが、この流れでそれは野暮だと思いました。
こういう時計は、マニアの方がコレクターズアイテムとしてご購入に至るものと思っていましたが、この方は、決してコレクターでも機械式時計マニアでもございません。ご購入の後も、私が話そうとするミネルバの歴史や買収の経緯とその後、スプリングを使った特許の機械について全く耳を傾けず、落下防止におつけしたポケットウオッチ用の紐(何か落としそうな予感がしたので)を首から下げて、ミネルバを耳にあててコチコチの音を聞きながら「この音は良いわ、きっと寝れる」という言葉を残して去って行かれました。長い間ストックしていた時計ですが、行くべきところへ行ったのだと今はとても嬉しく思っています。こんな物語を感じるお客様と時計の出会いは長い間に何度か、立ち会った気がします。というわけで、近日中に、もうひとつの積算計付きのほうをアップしようかと思います。
ミネルバ 積算計付きストップウオッチRef441601