W&J アフターサービス」カテゴリーアーカイブ

tudor_サファイアガラス破損/オーバーホール

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チュードルのアフターサービスは日本ロレックスがやっています。スクラッチには強くほとんど傷はつかないといわれるサファイアガラスも先端が鋭い金属や圧力がかかるとスクラッチがつくことがあります。また落下、衝撃がありさらに相手が悪いと破損します。通常ガラスが破損した場合は破片とかの関係でこういった場合ほとんどオーバーホールが必要になります。破片が飛んでいない割れであってもガラスをはずす際にガラス粉が落ちるという理由でほとんどのアフターサービスはガラス交換プラス、オーバーホールの見積もりがでます。

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除雪作業時の時計。

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12月からこう雪が多いと除雪作業も日常化してきますが、3気圧・5気圧防水の時計いわゆる日常生活防水の時計は除雪作業の環境では厳しいようです。特にクログラフ等はプッシュボタンに雪が付着してその状態でボタンを押したり、または気づかずに手首でボタンを押すような状況になるとケースに内に水が入りガラスが曇ったりします。この状況は、想定外の使用法で、表示の防水性能とは関係ありませんのでご注意。またうっかり作業中に衣服にひっかけてリューズが出ていたりすると水は入りやすいです。どうしても付けたいなら、クロノならプッシュボタンもロック付き、リューズはねじ込み式が好ましいです。スキーの時も同じですね。

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サファイアクリスタル編(その3 無反射コーティングの理由)

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硬度、透明度といった点で時計のガラスには最も適している素材といえるサファイアクリスタルですが、以前こんな話があったようです。ロレックスの時計がプラスチック風防からサファイアガラスに変わった時、サブマリーナも変わりました。サファイアガラスのサブマリーナをダイバーが、水中でいつもの角度で時計を見るとサファイアガラスが全反射して時間が読みづらく、反射がサメを呼ぶという説もあり、不評だったようでうす。(プロには)少々角度をかえれば大丈夫な話ですが、プラスチック風防に慣れたダイバーには瞬時で時間を読みとるまでには時間を要したかもしれません。実際には陸で使うユーザーが殆んどなのが現状なのでこの不評は少数意見としてかき消されたのかもしれませんね。
これはサファイアクリスタルの屈折率がプラスチック風防より高いために全反射する角度の範囲が大きくなったからです。いつも見ていた角度で見えなかった訳です。面の屈折率が高いほど臨界角との関係で、全反射する角度範囲が大きくなります。ガラス面が動いたとき、ガラス面がキラキラ反射する確率も高くなると言うことです。
ちなみにダイヤモンドの屈折率は2.417と天然宝石の中でも高く、これがダイヤが他の宝石よりも良く光るキラ・キラする理由の一つです。ちなみにサファイアクリスタルは1.762-1.770、時計に使われるミネラル・ガラスで約1.52、プラスチック風防で約1.49(ガラスやプラスチックの値は一定ではない)です。そこでサファイアガラスのキラキラを少なくし視認性を上げるするために、サファイアクリスタルに無反射コーティングを施す場合があります。手元がキラキラしない、光らない方が上品で、そういうメリットがあるとも思います。コーティングされているものはガラスに光源(電球や蛍光灯)を反射させたときガラスに映る光源が薄い紫色になるので解ります。(参考写真:下)コーティングすることでせっかくサファイアガラスの高い硬度のメリットを捨てていると言う考え方もあるようです。お持ちの時計はどちらでしょうか?またお好みは?
光源が反射した時にダイヤルがパープリッシュブルーに映る無反射コーティングされたガラスの例。
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サファイアクリスタル編(その2サファイアクリスタルがダメージを受けるとき)

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基本的に物質にキズがつくときは、その物質より硬度が高いものが接触したときです。一般的に空気中のゴミのなかで硬度が最も高いものはクォーツ・水晶の粉といわれています。水晶は硬度7です。(時計をお手入れするときにクロス等に目に見えないゴミやホコリがついていてその中に硬度の高い物質の粉が混じっているとケースやプラスチック風防等にキズを付ける場合があります。なので、お手入れクロスは拭く側を内側におってたたむとか、ビニール袋に保管するとかしてホコリがつかないように心がけましょう。

話をサファイアクリスタルに戻して、硬度9のサファイアクリスタルに日常においてスクラッチ・引っ掻きキズがつくことはありません。ただし、接触したものの先端が鋭いとき、それに圧力が加わった時は例外です。サファイアクリスタルにキズがついた事例を何度かみていますが、多くは糸のような細いキズです。
実際に注意すべきは、金属等の堅いものに風防(サファイアクリスタル)のエッジにぶつけた時におきるチップ、いわゆる欠けのほうです。デザイン、作りによって風防のエッジがたっている時計はチップする確率が高くなります。

たとえばロレックスオイスターは立っている方で注意が必要です。にもかかわらず、また防水性の高いという安心感から、またブレス仕様ということもあり日常ガンガンのユーザーが多いこともあいまって、オーバーホールの見積り時にこのチップを指摘されてクリスタル交換オプションがつくことが案外多いんです。チップからクヒビからワレへと進行する可能性があります。メーカー修理としては、修理保証をつけますので、防水性に問題があるという理由で交換必至の見積もりがですます。
チップは肉眼で見えないサイズのもの含みますから、見積もりが出て「クリスタルにカケ?そんなはずはないんですが?」という方も多い。なので店頭ではロレックスのお預かり時はルーペでぐるっとクリスタル円周のチェックは必至だと思っています。発見したらルーペかキズミをお貸しするか、店頭のジェムスコープでその場で確認していただくことにしています。
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左:ロレックスオイスター赤い三角部にチップ。 意外と立ち上がっているオイスターのクリスタル。プラ風防だった頃の名残でしょうか?右:ジャガールクルトマスターシリーズ。ベゼル部からガラスの立ち上がりが低くチップしにくいタイプと言える。


左:ノモス AHOI 20気圧防水でありながらケースとサファイアクリスタルの接点はスムーズ。
ノモス AHOIシリーズ
右:ハミルトン カーキフィールドオート 高いコストパフォーマンスはムーブメントだけでなくこういった細部にも見られる。こちらもベゼルからクリスタルの立ち上がりは少ない。
ハミルトンカーキシリーズ

カイラッシュ サファイアクリスタルトラバースサファイアクリスタル
アウトドア使用に特化したスントもカイラッシュ、トラバースアルファといったモデルでサファイアクリスタルが採用されるようになりました。左がカイラッシュ、右がトラバースアルファ、スタイリッシュが売りのカイラッシュでもベゼルと同じ高さ、ミリタリーのトラバースアルファは、一段下げてセットされています。エッチのチップ防止が配慮されたセッテイングです。
スント

高度と強靭性の違い
あるクイズ番組でダイヤモンドを鉄板の上に置きハンマーで思いっきり叩くとどうなるか?という問題があり、実験をやってましたが、答えはこっぱみじん。「硬度」と「強靱性(ねばり)」は別です。高度がダイヤの次のサファイアクリスタルでも条件が重なれば壊れます。

サファイアクリスタルにキズがついたという場合によく見ると表面のコーティングにキズがついたという場合があります。硬度9のサファイアに、どうしてコーティングが必要か…..は、次回。

(2017.7.22  加筆&参考画像追加)

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サファイアクリスタル編(その1,サファイアクリスタルとは。)

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先日、ロレックスをお探しのお客様が、サファイアクリスタルは絶対に割れることはないと、あるお店で販売員から聞いたが本当?と聞かれました。(そんなものがこの世にあればNASAが黙っていないはず….。)正規店でもそんなことを仰って販売しているとは。^^;
そこで、サファイアクリスタルについて段階をふまえて、正しい知識をシリーズでお伝えすることを決意しました。うんちくを語る際の一助になれば幸いです。今回は、そもそも時計に使われているサファイアクリスタルとは…。

 時計に使われている通称サファイアクリスタルは正確に言うとシンセティック(合成)コランダムの中のカラーレス(無色)サファイア、コランダムという結晶は赤以外の変種の場合、頭にその色をつけてサファイアと呼びます。ブルーサファイア、イエローサファイア、バイオレットサファイア、無色はカラーレスサファイア …..ちなみに赤だけはルビーと称します。ムーブメントの何石と表示する軸受けに見える赤い石、受け石は、このシンセチック(合成)・ルビー。話をサファイアガラスに戻しますと何故サファイアが時計のガラスに使われるようになったかというと、第1の理由は世界最強とは言えないまでもその硬度です。モースの硬度表で行くとダイヤが10でだんとつの1位、次に硬度9のコランダム(サファイア)。この硬度はスクラッチ、ひっかき傷、に対する強さを表します。理屈で行くとコランダム(サファイア)はダイヤモンドに接触しない限りキズはつかないことになります。しかし実際は、サファイアガラスも条件によってはキズもつきます。(理屈通りに行かない。世の中はそんなものです。)ちなみに同じコストで同じサイズのダイモンドの合成が人工的にできれば合成ダイヤモンドがサファイアに取って代わるか…というとそれも疑問です。屈折率や臨界角も関係しますので、また割れる割れないという破壊的な話になるとそれは硬度とは別の話です。その辺りは次回。

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オーバーホールに出す前の確認と心構え。

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時計を選ぶときに、ディテールにこだわるのは当然なこと。また買ったときには気づかなくても長いお付き合いしているうちに、「その部分」が妙に気にいってくることや新作を見てこれで良かったと納得することありますね。これを愛着というのでしょうか。機械式時計の魅力の一つだと私は思います。それが、定期的なメンテに出した時に、運悪く「その愛着の部分」が部品がすでにストック切れのため、違うものに変えざるを得ないと宣告さるケースは、ユーザー側にとってもそのことを伝えなければいけない販売した方も、そこにメンテを依頼することを躊躇するくらいショックなことです。
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同社のオーバーホール依頼の際、針交換のケースが多く、交換になるかどうかは、実際に作業を進めて外してみないとわからないと見積もりの段階で言われます。進行すると今まではほとんどの結果、交換になっています。写真の90年代初めのモデル(オールドナビタイマー、コスモノート)に使用されていたホワイトのエナメルの針は、すでにアフターには在庫はなく、銀色のマーク入りにのものに変わりブラックの永久秒針、クロノ分集計、時間集針は、ブルーに変わる。ブラックダイヤルに白い針、ブラックのスモセコが計器を彷彿し精悍でここに魅力を感じているユーザーも多いはず..。残念。90年半ば以降のものも永久秒針、クロノ分集計、時間集針の形状が変わるものがあるのでご注意。

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カレンダーの調整(早送り)

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(1)リューズを一段引いて早送り。
 現在最も多いタイプです。ほとんどは、リューズを引いて一段目にカレンダー、二段目に時刻調整ですね。ゼニスのエルプリメロはが逆になってます。またエリートは日付を進めることも、バックすることもできます。
(2)コレクターによる早送り
 コレクター、プッシュボタンを押して進める方式。コレクターの場合、金属製の専用のピンで押したりしますが、爪楊枝なんかも便利だったりします。
(3)長針を進めて早送り。
時刻調整のリューズポジションで針を進め12時〜1時でカレンダーを進め、今度は針を11時〜8時ぐらいまでバック、これを繰り返して日付を進める方法。ノモスのタンジェント・ディトやジャガールクルトノのCal;918が搭載されているコンプレッサーメモボック、レベイユはこのタイプです。何時まで進めて、何時までバックするかはキャリバーによって違います。また多少個体差はあるようです。
(4)短針を進めて早送り。
GMT機能付きに多いタイプです。リューズを一段引いて独立して動く短針を進めて日付を早送りします。
ロレックスのGMTマスターII,ジャガールクルトのマスターホームタイムなんかそうです。
(1)と(2)の調整の方法の場合、時計が示す時間がカレンダーが変わる午前0時前後3時間でないことを確かめないといけません。この時間帯に早送りをすると機能を損傷する可能性があります。たとえばカレンダーが変わらないとか、変な時間に変わるといった症状です。ナイト&ディ針や24時間針がない場合は、午前・午後の判別ができないのでダイヤルの上半分に短針がある場合は、調整しない方が無難です。その場合、針をぞらしてから早送りをしましょう。以前ゼニスのセミナーの際に、スイスの技術者はダイヤルの上半分の時間帯をデンジャラス・ゾーンと呼んでいました。(3)と(4)はちょっと面倒な感もありますが、デンジャラス・ゾーンはありません。いずれにしても早送り調整は、ゆっくりされたほうが機械にやさしいと言えます。

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