店頭奥の接客ルームの隅にもくもくと時を刻んでいるドイツ、ウルゴス社のホールクロック。15分おきに美しいチャイムを聞かせてくれています。今年も注油の時期がやってきました。
背面のメンテ用に設けられた板を取り外すと、手前にチャイムのハンマーが見えます。左に8本、右に4本のハンマー計12本(12の音)で、ロンドンのウエストミンスター寺院よりながれる曲、キリストの聖霊降臨祭に奏でられる曲ウイッテングトーン、ドイツ、ハンブグルクにある聖ミカエル教会で奏でられる曲の3曲を奏でます。この3曲は文字盤にあるスイッチで選曲できます。
15分、30分、45分、とだんだん長く演奏され、正時にフルに演奏した後、荘厳に時報を打ちます。
ちなみに3曲の楽譜です。
この部屋の片隅のMacの前が常時私がいる場所ですが、15分おきは頻繁のようですが、全く耳障りではなく、なくむしろ心地良い響きです。今となってはこの部屋になくてはならない存在になりました。で注油です。
時計の機械部は後ろから見てチャイムモジュールの奥になるので、暗くて懐中電灯は必需品です。そこで、今回活躍したのがミリタリーショップで見つけたL字型の懐中電灯(PS3のアンチャーテッド2でネイトが腰に付けていたのもコレ!?)置いても転がらないし、両手が使えて便利でした。
注油後は時計をもとの位置に戻し、振り子、錘を提げて完了。トップの写真です。これで気持ちよく新年を迎えらそうです。御来店の際には、是非音色を聞いて下さい。今日は、セント・ミカエルのチャイムです。
「修理」タグアーカイブ
1880年代〜THE E.INGRAHAM&COの掛時計。
昨年の暮れ、地元のご住職がこれ直るかなぁと持ち込まれた古い掛け時計。長く物置の隅にあったとかでホコリがひどく、試しにゼンマイを巻こうとしたらゼンマイの穴が摩耗していて巻くことも出来ず、なんとかなればと思う気持ちはありましたが、これは難しいなぁ、一応お預かり。お正月休みにその気になって調べてみると1880〜1884くらいに製造されたアメリカ製E.IGRAHAM社の由緒正しいも。八日巻き、時報付き、金箔モデルは当時の資料によると当時$9だったらしい。(125年前の$9っていまですとお幾らか?)資料と見比べると針も(短針が折れかかっているものの)オリジナルのようで、少なくとも外装に関しては全てオリジナル部品。第一のハードルであったゼンマイはたまたまうちにあったもので巻き上げたらなんと巻き上げが出来てクリア。これなら洗浄して注油すると動き出すのではと分解開始。しかし…分解を始めると次々に押し寄せるハードルが…….
1995MURALE B 紐交換に挑戦!
お店の入り口右に掛かっているアランのクロック。お客様の時計です。その時計のオーナーのご好意でお買い上げ後も、そのままになっています。もう入荷がない時計だし、アランの好きな方がこの店には来られるから、一人でも多くの方に見せてあげてくださいと…。そのありがたいご好意に甘えて12年、たまに巻き忘れた日もありますが、調子を見ながら動かしていました。それがそろそろ実家に帰る日が近づいてきました。
錘を下げる赤い紐は消耗品です。実家に戻る前にせめて注油はもちろん、紐を交換することに。
代理店モントレソルマーレから届いた新しい紐。左が新品、右が12年間4Kgの錘を提げていた紐。使用前、使用後ですね。
それでは側面のアクリル板を外して、作業開始!!
tudor_サファイアガラス破損/オーバーホール
チュードルのアフターサービスは日本ロレックスがやっています。スクラッチには強くほとんど傷はつかないといわれるサファイアガラスも先端が鋭い金属や圧力がかかるとスクラッチがつくことがあります。また落下、衝撃がありさらに相手が悪いと破損します。通常ガラスが破損した場合は破片とかの関係でこういった場合ほとんどオーバーホールが必要になります。破片が飛んでいない割れであってもガラスをはずす際にガラス粉が落ちるという理由でほとんどのアフターサービスはガラス交換プラス、オーバーホールの見積もりがでます。
11年振りの里帰り。アーキテック。
1995年に販売したアーキテック(1993)をオーバーホールでお預かりしました。久々の里帰りで、懐かしく思わず写真を撮りました。お持ち頂いたのは、オーナーの妹様、譲り受けたとか。久々に手に取りましたが、今でも古くささを感じさせないクールな時計でした。当時は店頭で赤い針やクネクネ秒針がとっても変わった時計というふう見られていたことも思いだしました。その方々に今もう一度印象をお聞きしたらどんなお答えが帰ってくるか興味あるところです。時が流れても風化しないデザインこそ機械式時計にふさわしいと思ったわけです。
店頭電池交換でのサービス。
電池交換の際に、シリコングリスを裏ぶたパッキン及びリューズパッキングに塗布するサービスを夏に備えて強化しています。シリコングリスは撥水性(水をはじく性質)の強い潤滑油で、防水性の再現・保持に効果を発揮します。時計には対敵の汗・湿気・ホコリの侵入に対して良い効果があります。
「注意」:防水性は時間とともにパッキンの劣化等で低下します。いつまでも購入当時の防水スペックではありません。特にダイビング、水仕事用の場合は定期的な防水テスト、パッキン交換が必要です。
(2016.7.24追記)
ここ1年間、電池交換の際に、少し古い時計には、可能な限り注油サービスを行っています。クォーツ専用のオイルを軸受けに注油ですが、電池寿命が短かったとかという声がこの1年はだいぶ減ったというか殆どありませんでした。効果はあると実感しています。いつもより少しお待ちいただく時間が長くなりますが、シリコングリースと合わせて、このサービスはこのまま継続していこうと思います。
(2022.10.14追記)
店頭、電池交換作業箇所に、実体顕微鏡を設置しましたので、電池交換の際の注油の際により、お待ち頂いている間に、オイルの状態、注油箇所の汚れの状態を確認して対処及び注油が出来るようになりました。